インターネットの普及に伴い、昨今のビジネスシーンにおいて、どのような業種業態であったとしてもネットワークの活用は不可欠になってきています。情報発信のためのホームページや商材やサービスの購入における決済システム、社内の共有システムなど、ネットワークを活用したリソースは多岐に渡ります。このような情報通信ネットワークが仮にダウンしたり、不正にアクセスされたりした場合、企業の運営に影響を及ぼすだけではなく、顧客も含め莫大な損害につながる可能性があります。

そうならないためにも、日々のネットワーク監視ツールの導入は欠かせません。セキュリティ対策だけでなく、人件費の削減や企業としての信頼度の向上にもつながります。とはいえ、ネットワーク監視ツールの導入を検討していたとしても、どこから手をつけたらいいのか分からない、どういったものなのか不明、システムに強い専門家が自社にはいないなどといった形で、一歩が踏み出せない企業は少なくありません。
そこで今回は、社内のネットワークをより快適にできる、ネットワーク監視ツールの概要や特徴、導入のメリットや注意点などについて、ポイントをふまえて紹介していきます。

ネットワーク監視ツールとは?

ネットワーク監視ツールとは、その名の通りネットワーク上で自社のホームページやアプリケーション、システムなどが正常に稼働しているか情報を集め、監視するツールとなります。ネットワーク監視ツールの監視対象は、基本的にはサーバーやルーター、スイッチ、WiFiアクセスポイント、ファイアウォールなどのネットワーク関連の機器となります。更にネットワーク監視ツールによっては、オンプレミスのサーバーや、パブリッククラウド上のサーバー、仮想化環境なども合わせて管理できるものも存在します。
システム障害だけでなく、ネットワーク環境はいつどこで不具合が生じるか分かりません。例えば、自社の商材やサービスがテレビやメディアで紹介され、一気に多くのユーザーが自社のホームページにアクセスするようになると、サーバーがパンクしシステムダウンしてしまうことが起こり得ます。
このような予測不可能な障害が発生した場合、何が原因で稼働しなくなったのかを調べ、その上で対策を講じなければならないため、トラブル発生から解決までに大幅な時間を要することになります。時間を要すればその分企業に与える損害は大きくなるばかりですが、ネットワーク監視ツールを導入しておけば、日々障害の予兆が無いか確認し、サーバーダウンやトラブルの一歩手前で危険性を察知することが出来るようになります。万が一障害が発生したとしても、ネットワーク監視ツールを導入していれば、何が原因で障害につながったのかをすぐに把握することが出来ますので、企業における損害を最小限に抑えることにもつながります。

障害発生を予防!復旧も簡易化。ネットワーク監視ツールの特徴

そもそもネットワークの監視とは、自社内のネットワーク機器などが正常に稼働しているか、また異常なデータなどが流出していないかなどを確認することを指します。このような障害の発生を予防し、仮に見つかっても簡易的に復旧できるようにするために、人に代わって24時間365日ネットワークを監視するのがネットワーク監視ツールになります。

ネットワーク監視の対象

ネットワーク監視において対象となる機器は、基本的には社内のネットワーク上で動作する機器になります。具体的にはルーターやスイッチ、無線LANのアクセスポイント、ロードバランサー、サーバーなどが対象となります。このような機器に対して監視する項目は、主に4つに分類されます。

①死活監視
死活監視とは、ネットワーク監視の中でも最も基本的な項目になります。自社のネットワーク機器が正常に稼働しているか確認するとともに、安定した供給・提供を促します。また一方で、ネットワーク機器の内部の状態や外部からのトラフィックなどを監視することはできません。死活監視には、ICMPというプロトコルを使った「Ping監視」と、サーバーのポートがダウンしていないか確認するための「ポート監視」に分けられます。
②遅延監視
遅延監視とは、その名の通り、ネットワークやサーバーのレスポンス(応答スピード)が遅延していないかどうかを確認する項目になります。アクセスから応答までにかかった時間をグラフ化し、その数値が正常の範囲内かどうかを確認します。

③経路監視
経路監視とは、ネットワーク機器やサーバーのトラフィック情報を監視し、異常なトラフィックが無いかどうかを確認する項目になります。冒頭で紹介した自社のホームページに集中したアクセスなど、トラフィックが集中することでネットワークの遅延や通信速度低下が起こり得ます。経路監視では、このようなトラフィックが増えた状況などを常時監視することで、トラブル防止につなげていきます。

④状態監視
状態監視とは、ネットワーク機器やサーバーの状態を監視する項目になります。SNMPと呼ばれるプロトコルを活用し、対象のネットワーク機器のCPUやメモリの利用状況、ハードディスクの利用状況などのリソース面を監視することで、障害を未然に防ぐだけでなく、トラブル時にも迅速に対応できるようになります。

ネットワーク監視と侵入検知との違い

ネットワーク監視と関連したサービスとして、侵入検知というものがあります。ネットワーク監視ツールでは、社内のネットワーク機器の監視が対象となります。これに対して侵入検知とは、社内のネットワークに対する外部からの不正なアクセスを検知するためのシステムとなります。ネットワークの普及に伴い、外部からの不正なアクセスによる攻撃や、情報の不正取得を狙った動きが増加してきています。このような不正なアクセスを遮断することで、セキュリティ対策をより強固にすることができます。

昨今のシステム監視ツールの主流

通常のネットワーク監視ツールでは、あくまで自社のネットワーク機器の監視に特化したものが一般的でしたが、昨今ではここにサーバー情報も同時に監視できるツールが主流となってきています。ネットワーク機器とサーバーは連動していることが多く、どちらで障害が発生したとしても連動して被害が増加する懸念がありましたが、この2つを統合して監視することで、効率的に運用することが可能になります。

ネットワーク監視ツールを導入するメリット

ネットワーク監視ツールは、トラブルを未然に防ぐ、仮に障害が発生したとしてもすぐに解決につなげるという点が導入における最大のメリットになります。障害の程度に限らず、システムトラブルによって自社の業務が一度停滞してしまうことは、企業において大きな損害につながります。特に、インターネット上で商材やサービスを展開している企業にとっては顧客に直接迷惑がかかるため、その被害は売上といった数字以上に大きくなります。リスクヘッジがそのままメリットとなりますが、具体的にネットワーク監視ツールを導入するメリットについて4つポイントを挙げて紹介していきます。

①障害やトラブルの予防・事前の予兆検知
どのようなサービスを使用していたとしても完全なものはないため、どうしても障害やトラブルが発生するリスクは伴います。ただ、それが発生するリスクを最小限に抑えることができれば、障害やトラブルを予防することは可能です。また、事前に障害やトラブルの予兆が分かれば、発生する前に対策を講じることが出来ます。ネットワーク監視ツールでは、サーバーの負荷やCPUの利用率など、障害やトラブルにつながる前にアラートとして表示させ確認することが出来ます。そのため、障害やトラブルを未然に防ぐことにもつながるでしょう。
②障害やトラブル解決までの時間の短期化
万が一障害やトラブルが発生した場合には、出来る限り早い解決・復旧が求められます。この作業は、原因の特定から始まりますが、特に何も対策を行っていない場合、何が原因で障害が発生しているのか特定することに非常に時間を要します。これに対し、ネットワーク監視ツールを導入しておけば、何が原因で障害が発生したのかの特定がすぐにわかるため、解決や復旧にかかる時間を大幅に短期化することが出来ます。

③ネットワーク監視作業の効率化
ネットワーク機器の監視には、基本的にはそれぞれの機器において最低限の監視機能がついていることが多いですが、それぞれを確認しなければならず個別の監視では限界があります。これがネットワーク監視ツールを導入することで、機器を跨いで総合的に監視することが可能になります。監視漏れを防ぐだけでなく、効率的に監視できるという点もネットワーク監視ツールのメリットの一つです。

④ネットワーク機器の利用状況の把握
ネットワーク監視ツールを導入することで、セキュリティ目的の監視だけではなく、各ネットワーク機器の利用状況も把握することが出来ます。例えば、サーバーやCPU、メモリやディスク帯域など、利用状況をふまえて増強やグレードダウンさせることも判断できるようになります。余剰コストを把握し、コスト削減につなげる上でもネットワーク監視ツールの導入は活用できるでしょう。

ネットワーク監視ツールのデメリット・注意点

一方で、ネットワーク監視の導入には、メリットだけではなくデメリットも存在します。これから導入を検討する際には、注意点として押さえておくといいでしょう。

①ネットワーク管理者のスキルに依存する
ネットワーク監視ツールを導入することで、自社のネットワーク機器の監視体制を強化できますが、これを行うためには自社にどのようなネットワーク機器があるのか、どこを監視するべきかキチンと把握していることが重要です。もし把握していないネットワーク機器で障害が発生したとしても、監視対象外であれば見つけ出すことはできません。そのため、ネットワーク管理者のスキルに依存することが多くなります。

②ネットワーク監視コストの増加
ネットワーク監視ツールを導入することは、どうしてもコストが発生します。障害やトラブルが発生する前には、導入するコストに対して懐疑的な社員もいるかもしれません。ただ、ネットワーク監視ツールはあくまでリスクを軽減するための保険のようなものになります。いざ障害やトラブルが発生した際の損害を考えると導入しておいた方が効果的ですが、コストをはじめ社員の理解を得ることが重要です。

ネットワーク監視ツール導入におけるポイント

ネットワーク監視ツールは、特徴の項目でも紹介した監視の対象をもとに、中小企業向けのサービスから大企業向けのものまで様々な種類のものが存在します。自社のネットワーク機器の状況や、カバーする対象の範囲などによって求めるネットワーク監視ツールの機能は異なりますが、基本的には以下の項目をもとに選定していくと効果的です。
・管理対象や範囲
・拡張性の高さ
・使い勝手の良さ
特に拡張性の高さは重要な判断基準です。自社のネットワーク機器は、企業規模の拡大に応じて新調されたり増加していきます。そのため、特定のバージョンでしか対応できないネットワーク監視ツールですと、ネットワーク機器の更新と合わせてツール自体も更新し直さなければなりません。ただ、これが拡張性の高いネットワーク監視ツールであれば、ツール自体の機能をアップデートするだけで対応できる可能性が高まります。先々を見据えてツール選びを行うと効果的です。

ネットワーク監視ツールのまとめ

いかがでしたでしょうか。
自社のネットワーク環境は、完璧ではなく障害やトラブルが発生する可能性を秘めています。これが現実に問題化した場合、自社における損害は非常に大きくなります。このような被害を事前に防ぎ、且つ問題が発生したとしても対策をすぐに講じる上で、ネットワーク監視ツールは必要不可欠なものです。自社のネットワーク環境を正しく理解し、自社に合ったネットワーク監視ツールにて障害やトラブルが発生するリスクを軽減していきましょう。