電子カルテは、紙のカルテを電子情報に置き換え、データとして記録するシステムのことです。
医者や看護師といった医療現場で働く方から、クリニックといった医療事務職、
それらを利用する患者にとってもカルテのお管理の効率化は求められています。

今まで多くの工数や時間をかけて作成された紙のカルテから、
電子カルテに移行する動きは2000年頃から活発になってきていますが、今現在でも未導入の現場は少なくありません。

手書きの紙のカルテから電子カルテに代わることで業務効率化が図られ、
データベース上での編集や管理によって患者の状態をより精度高く知ることができます。

一方で、電子カルテは導入コストも高く、大きな病院であればまだしも、
中小規模の医療機関やクリニックなどではなかなか手が出せない傾向もありました。

昨今においては使い勝手やコスト面でも大幅に軽減された電子カルテシステムが多く登場してきており、
開業したばかりの医療現場でも電子カルテを導入しやすくなってきています。

とはいえ、「電子カルテに移行したいけどどういったサービスを選べばいいか分からない」「電子カルテには、どんな機能があるの?」「電子カルテ導入時には、何に気をつければいい?」といったように、導入に対して不安に感じる担当者も少なくありません。

電子カルテに移行することは、業務効率化などの面でメリットがある一方で、デメリットも存在します。
そこで今回は、電子カルテシステムの概要をはじめ、メリットやデメリット、導入時に気をつけるべき点を中心に紹介していきます。

電子カルテとは

電子カルテとは、一般的には今まで紙ベースで行っていたカルテを電子版に切り替えたものを想起しますが、実際には紙のカルテの代わりというだけではありません。

厚生労働省では標準的電子カルテ推進委員会の中で、電子カルテのことを「医事会計システムやオンラインで繋がる検査、処方等のシステムの中心となり、患者の病状や治療経過の診療情報を保存し更新させ、この記録の検索・分析するもの」と説明しており、会計以外にも医療現場の業務を網羅したシステムと位置づけています。

これは、主に医療現場における会計システムをはじめオーダリングシステムや臨床検査システム、薬剤システムなどを連携させ、患者の病状といった情報とともに記録するものとして電子カルテを表しています。

特に現在では新型コロナウイルスの影響もあり、医療現場はひっ迫状況にありますが、それでも上手く患者を受け入れられているのは、このような電子カルテによるオンライン連携が進んでいることが影響もしています。
更に昨今では、クラウド化による電子カルテシステムも主流になりつつあり、電子カルテシステムは日々使い勝手が向上してきています。

電子カルテ導入のメリット

電子カルテ導入は、紙のカルテに比べて多くのメリットが存在します。
電子カルテのメリットについて紹介していきます。

①情報整理にかかる時間の大幅短縮

電子カルテは情報整理にかかる時間の大幅短縮のメリットがあります。
カルテは患者の生死にかかわる医療現場において、非常に重要な意味を持ちます。

患者によっては病状やケガの症状、アレルギーや過去の治療の経験など
カルテに細かく記載していく必要がありますが、紙のカルテの場合は毎回手書きする手間がかかります。

さらに、必要な情報をすぐに確認できなければ病状が悪化する原因にもつながります。
一分一秒を争う医療現場においては、すぐに書き込めて誰でも共有できる電子カルテであれば、
情報整理にかかる時間を大幅に短縮させるだけでなく、医者や担当者の工数軽減につなげることが可能になります。

②情報管理の効率の向上

電子カルテは情報管理の効率の向上のメリットがあります。
電子カルテと比較して紙のカルテでは、情報管理に時間も手間も必要になります。
数十件レベルであればまだしも、一日に数百件も来院する医療現場において、
患者数に応じて紙のカルテを用意していると情報が混乱し、
どこに誰のカルテがあるのか分からなくなることも起こり得ます。

一方で、これを電子カルテで管理しておけば、
データを削除しない限りはデータ上で管理することが可能になります。

検査結果や投薬データなども患者に紐づいて確認できるため、
情報管理を効率的に行うことができます。

この点も電子カルテ導入のメリットの一つになります。

③情報共有による医療の質の向上

電子カルテは情報共有による医療の質の向上のメリットがあります。
電子カルテによって患者の過去の病状や症状、アレルギーを事前に把握することができれば、
その後の医療におけるクオリティを向上させることも可能になります。

過去の検査結果や投薬データが分かるかどうかは、患者の診療に大きく影響を及ぼします。

例えば、レセプトと呼ばれる診療報酬明細書を作成する際に、
過去に患者が処方していた薬と一緒に飲んではいけない薬を処方することが無いよう、
電子カルテ上にアラートを出すことができるシステムもあります。

このように、電子カルテを導入すると医療事故を未然に防ぎ、適切な治療を行う上でも効果的です。

④医療現場内でのスムーズな情報共有

電子カルテは、紙のカルテと異なり複数の医療担当者が見たいときにいつでも閲覧できるのが特徴です。
紙のカルテであれば、どこに閉まったか分からず、見つけるまでに時間がかかる場合もありますが、電子カルテではそのようなタイムロスも極力なくすことが可能です。
情報共有がスムーズに行えるため、一分一秒を争う医療現場においては大きな強みになるでしょう。

電子カルテ導入のデメリット

一方で、電子カルテの導入にはメリットばかりではなくデメリットも少なからず存在します。
電子カルテ導入時にはデメリットについてもしっかりと理解した上で導入すると効果的です。

①初期費用やランニングコストがかかる

電子カルテ導入における最大のデメリットは、初期費用やランニングコストが発生する点です。
取り扱う患者数の数や求める機能によっても異なりますが、固定費が発生する点は中小規模の医療機関や開業したばかりのクリニックにとっては経営に大きな影響を及ぼします。
費用対効果をふまえた上で電子カルテの導入を検討することが重要です。

②セキュリティ対策を考慮する必要がある

電子カルテは紙のカルテに比べて情報共有がしやすい反面、
誰でも電子カルテを閲覧できるため、情報漏えいやデータ流出といったリスクが生じます。

特に患者の情報は個人情報となり、万が一漏えい・流出してしまうと大きな被害につながります。
クラウド型をはじめ、ネットワークシステムにはサイバー攻撃や不正アクセスといったリスクも存在します。そのため、電子カルテシステムのセキュリティ対策には十分考慮しておく必要があります。

③ある程度のPCスキルが必要

電子カルテは、ある程度のPCスキルが必要なデメリットがあります。
電子カルテを導入したとしても、入力するのは医者や現場のスタッフが中心となります。
従来の紙のカルテに慣れたスタッフでは、電子カルテを導入しても使いこなせない可能性もあります。

電子カルテの入力や活用にはそこまで専門的なスキルは必要ありませんが、
それでもある程度のPCスキルは求められます。

ITリテラシーが低いスタッフが多い場合には、
この点がマイナスにつながる可能性もありますので注意が必要です。

電子カルテを導入時選定のポイント

続いて、電子カルテを導入する際に選定するべきポイントについても紹介していきます。

電子カルテシステムは、医療現場からの要望もふまえて多数登場してきています。
とはいえ、実際に現場で使いこなせなければ意味がありません。

ポイントとしては以下の2つを意識して電子カルテシステムを選定すると効果的です。

①電子カルテの操作性

電子カルテの操作性がポイントです。
どれだけ多くの機能が搭載されていたとしても、どれだけ安いシステムだとしても、
現場が電子カルテを使いこなせなければ導入した意味がありません。

逆に操作性に優れた電子カルテシステムであれば、
業務効率化につながり、生産性を高めることができます。

また、電子カルテシステムは、病院やクリニックの予約や
支払いの際に患者が利用する場合もあり得ます。

そのため、電子カルテはスタッフだけでなく
患者も使いやすい操作性を意識して選定すると効果的です。

②電子カルテの安定性

電子カルテの安定性も導入する際には非常に重要なポイントです。
セキュリティ対策はもとより、安定して稼働する電子カルテでないと、
急にサービスが止まってしまった場合、患者の生死に大きく影響してしまいます。

既に導入している医療現場の声を聞いてみたり、
トライアルがあるのであれば、一度検討してみるのも効果的です。

電子カルテ導入時に気を付けるポイント

電子カルテ導入時に気をつけるポイントも紹介していきます。
先ほど紹介したのは電子カルテ選定時のポイントですが、導入時に注意すべき点は以下となります。
導入後にトラブルにならないよう気をつけると効果的です。

①病院やクリニックにあったシステムか?

病院、クリニックの目的に合った電子カルテなのか?気をつけるポイントです。

開業したばかり病院なのに100万人まで対応できる
電子カルテシステムを導入しても、コストがかかるだけになるでしょう。

徐々に患者数が増えても対応できる電子カルテなのか含めて確認しておくと効果的です。

②必要な機能を事前に把握しておく

電子カルテに必要な機能を事前に把握しておくことも気をつけるポイントです。
電子カルテシステムは、多くの機能が搭載されたものが多数登場していますが、
全ての機能が必要なのか事前に把握しておく必要があります。

どういった目的で電子カルテシステムを活用したいのか、
重点を置きたい点はどういった要素か事前に把握しておき、
その機能が搭載された電子カルテシステムを導入することが重要です。

電子カルテまとめ

いかがでしたでしょうか。
電子カルテについて紹介しました。

厚生労働省も医療現場におけるICT化を推奨しており、
電子カルテの導入は、今後も多くの医療現場やクリニックなどで進んでいくことが期待されています。

とはいえ、闇雲に導入するだけでは現場に混乱を招き、
結果的に上手く移行できずに終わってしまうことも起こり得ます。

何でもデジタルに移行すればいいのではなく、
自院の状況をふまえいかに効率化が図れるかを意識して電子カルテを選定することが重要です。

今回紹介した内容も参考に、電子カルテを上手く現場に活かしていきましょう。