変化の激しい現在のビジネスシーンにおいて、企業としてパラダイムシフトに対応していくことが求められています。このパラダイムシフトという言葉について、どのような認識を持っているでしょうか?テレビや新聞を始め、様々なメディアで取り上げられることが多いため、パラダイムシフトという言葉自体は耳にしたことがあるかもしれません。ただ、実際には「聞いたことはあるけどよく分からない」といった担当者も少なくありません。業種業態問わず、また経営者や一社員も関係なく、企業が生き残っていくためにはパラダイムシフトが重要なキーワードになってきています。変化の激しい時代だからこそ、パラダイムシフトを正しく認識しておくことは重要です。今回は、働き方が多様化する中で浸透しつつあるパラダイムシフトについて、その特徴や事例、企業として考慮すべき要素などとともに紹介していきます。
パラダイムシフトとは
そもそもパラダイムシフトのパラダイムとは、ギリシャ語で手本や模範を意味するparadeigmaに由来し、特定の時代において人々に支持されている考え方のことを指します。
このような常識や模範などがシフトすることがパラダイムシフトとなり、常識や模範が変動することを意味します。要は、それまで当たり前と考えられていた価値観や概念といったものが大きく変わることをパラダイムシフトと呼びます。
直近でパラダイムシフトの最たる例としては、新型コロナウイルスの影響が挙げられます。
今までは風邪などの体調不良でない限り、外出時にマスクをすることはありませんでしたが、現在では全ての人が外出時にマスクを付けることは一般的になっています。
ビジネスシーンにおいても同様で、会社への出勤が当たり前の生活から、テレワークや在宅ワークが主流となり、対面の打合せよりもリモート上でのやり取りの方が一般的になってきています。
このように、それまで多くの人が一般的と認識していたものが、ある事象をもとに大きく変化することがパラダイムシフトとなります。
パラダイムシフトを意識した動きは、企業として敏感に把握しておく必要があります。
パラダイムシフトが起これば、それまでの市場やユーザーニーズといった共通認識が大きく変わるため、今までのビジネスが成り立たない可能性があるためです。先の例でいっても、テレワークに参入するのが遅れれば、他社とのビジネスが円滑に進まず、業務が滞るだけでなく、売上の減少につながる怖れもあります。一方で、パラダイムシフトを上手く活かせば他社よりも先に大きな利益につながる可能性もあります。
新たなサービスや技術の創出、はたまた新型コロナウイルスのように全世界を揺るがす事象などにより、ビジネスの流れが大きく変わることが起こり得ます。
市場の流れが速い現代においては、大なり小なりパラダイムシフトが常に予測されているため、いかに早くキャッチし、自社のビジネスにおいて今後どのように対応していくか検討していくことが求められています。
パラダイムシフトが加速している背景をまとめてご紹介
では、なぜ近年においてパラダイムシフトが注目されているのでしょうか?パラダイムシフトは、人類史において頻繁に起こっていますが、科学技術の発展・向上によってそのスピードは非常に早くなってきています。近年におけるパラダイムシフトが加速化した背景として考えられる要素は、大きく以下の3つが挙げられます。
①デジタル技術の発展
まず挙げられるのがデジタル技術の発展です。デジタル化された商材やサービスは、ここ近年では目覚ましく発達してきています。
人々の生活に欠かせない家電や自動車なども、インターネットを活用したIoT技術によって様々登場してきていますし、AI(人工知能)を活用した産業用のロボットなども、各業界でイノベーションを起こしています。さらに、膨大なデータを分析・解析することで、新たな価値観を生み出すビックデータを活用した技術も進化し続けています。このように、デジタル技術を活用した商材やサービスは、日々の生活には欠かせない分野まで浸透しています。デジタル技術の発展は、パラダイムシフトの加速化に大きな影響をもたらせている要素の一つです。
②インターネットの普及・向上
もう一つはインターネットの普及・向上です。
パソコンの発達やスマートフォンの登場なども、インターネットの普及が重要なカギになっています。このインターネットの普及・向上は、①のデジタル技術の発展にも影響し、スマートフォンの普及、さらにSNSの登場など様々なパラダイムシフトを加速化させる要因にもなっています。
回線環境も日々向上しつつあり、インターネットの普及によって一気にグローバル化が進み、国際化にも起因したともいわれています。
③新型コロナウイルスによる影響
最後は、特徴でもふれた新型コロナウイルスの影響です。新型コロナウイルスは、我々の生活を脅かす脅威となっていますが、一方でこの影響によってビジネスシーンは大きなパラダイムシフトにつながっています。
それがテレワーク(リモートワーク)の普及です。日本においては、働き方改革によって在宅ワークが推奨されつつありましたが、今一歩伸び悩んでいる傾向にもありました。
それは対面ビジネスに慣れた日本特有の背景も影響していましたが、新型コロナウイルスによって市場ごと大きくテレワーク(リモートワーク)に舵を切らざるを得ない状況に陥りました。
これが結果的にパラダイムシフトにつながり、ノートパソコンやヘッドセットといったハード面だけでなく、業務・勤怠管理システムなどのソフト面においても環境が大きく様変わりしました。
パラダイムシフトの例
新型コロナウイルスよりも以前で、近年で最も大きなパラダイムシフトの事例と言えば、ネット環境の普及とスマートフォンの登場が挙げられます。
それ以前は固定電話が主流で、インターネットの普及によってフィーチャーフォンが主流となりましたが、スマートフォンへの移行は発売当初はまだ懐疑的な面もありました。
ところが、徐々に各キャリアから様々な機種のスマートフォンが登場する中で、徐々に人々に浸透し出し、現在ではほぼ全てのユーザーが1台は所持しているほどにまで広まっています。
インターネット回線の向上やアプリケーションの登場、更にSNSがメジャーになることで、スマートフォンは電話以上に必須なアイテムに変貌しました。
これに伴い、ビジネスシーンにおいてもスマートフォンをはじめとするメディアをいかに活用し、ビジネスチャンスにつなげるかを模索するようになり、現在マーケティング領域においてネットメディアの割合は、他のマスメディアよりも高くなっています。これは、インターネットの普及とスマートフォンの登場によるパラダイムシフトが起こった大きな事例の一つといえます。
パラダイムシフトのメリット・デメリット
パラダイムシフトを意識することは、ビジネス面においては非常に重要です。その大きな要素が、ビジネスの流れが切り替わるタイミングを逃さず活用すれば、大きなビジネスチャンスにつなげることが出来る点です。
今までの常識にとらわれない新たなニーズを上手く汲み取り、そこに自社の商材やサービスを展開できれば、新たなユーザー層を取り込むことが出来、売上にもつながる可能性も高まります。
また一方で、パラダイムシフトをふまえず今までの常識のまま進んでしまえば、市場から取り残され大きな損失につながる可能性もあります。
例えば、スマートフォンに移行する中でフィーチャーフォンに固執しても、売上は減少するだけですが、パラダイムシフトを踏まえてスマートフォンを活かしたビジネスに移行できれば、新たなビジネスチャンスにつながるでしょう。
一方で、パラダイムシフトを読み切ることは非常に難解です。いつ切り替わるのか、未来は分かりませんので、常にアンテナを張りながらビジネスを行うことが求められます。
また、今までの常識に捉われすぎると、なかなか新たなビジネスに移行することは困難な傾向もあります。
パラダイムシフトに対応する組織とは
メリット・デメリットの最後にふれたように、パラダイムシフトを意識しビジネスとして展開していくことは非常に労力がかかります。いつどこで、どのようなパラダイムシフトが起こるか分からない中で、パラダイムシフトに対応する企業・組織となるためには、どういった点を考慮しておく必要があるのでしょうか?押さえておくべきポイントは3つです。
①常にアンテナを張り、変化に敏感になる
パラダイムシフトはいつ起こるか分からないからこそ、常にアンテナを張り、変化に敏感になるとともにいち早く気づくことが重要です。少しでも変化の兆しがあれば、業界や市場、顧客の動向をはじめ、まずは広く情報収集を行うと効果的です。プロダクトライフサイクルの短期化といわれるように、昨今ではいかに早く変化をビジネスにつなげるかが重要になります。
②柔軟性を持つ
旧態依然や古い常識にとらわれ過ぎた環境下では、パラダイムシフトが起こったとしてもすぐに行動に起こすことが難しい場合があります。同じ手法や考え方が悪いという訳ではなく、企業として成長していくためにはやはり市場やユーザーニーズに応じた柔軟な対応が求められます。パラダイムシフトが起きたとしても、すぐに行動に移せるよう、常日頃から企業内の柔軟性は高めておくと効果的です。
③失敗を恐れない
パラダイムシフトをふまえて事業の創出を図るためには、ある程度のリスクは付きものです。②にもつながりますが、挑戦しない限りは新たなビジネスチャンスを掴むことは出来ません。失敗しないために、事前に情報収集に努めたり、効果をふまえたシミュレーションを行うことはもちろんのこと、その上で、最終的には失敗を恐れずに挑戦する企業体制が求められます。
パラダイムシフトまとめ
いかがでしたでしょうか。
市場や社会の変化は常に移り変わり、今後もより一層の技術革新が様々な分野で起こることが期待されますが、パラダイムシフトを事前に予測するのは非常に困難です。とはいえ、企業として今後生き残っていくためには、パラダイムシフトを意識した柔軟な組織作りが求められます。今回紹介したポイントなども参考に、変化に備えた企業体制を目指していきましょう。