「少子化」が進んでいる日本ではありますが、それ以上のスピードで女性の社会進出が進んでいるということもあって、多くの地域で保育所が満員になっている、保育士が不足しているという状況があります。
そこで近年よく聞く言葉として「みなし保育士」というものがあります。
しかし実際には「みなし保育士」という資格や職業は存在していません。
そのため具体的には知らないという人が多い言葉でもあります。
ここでは「みなし保育士」について細かく紹介していきたいと思います。

保育士という資格について

まず根本的なことですが、基本的に保育士の仕事をするには「保育士」の国家資格を取得する必要があります。
ここでは簡単に保育士の資格について紹介します。

法律上の「保育士」とは

一般に「保育士」と呼ばれている職業は法律上は「児童福祉法」に規定されています。
その規定では、
「保育士とは、保育士の登録を受け、保育士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもって、児童の保育及び児童の保護者に対する保育に関する指導を行うことを業とする者をいう。(児童福祉法第18条の4)」
となっています。
つまり保育士になるためには「専門的知識、技術」を持ち、「児童の保育」「保護者に保育の指導」ができる専門性が必要ということになります。
単純に子どもを預かっていれば良いというものではないのです。

みなし保育士とは

「みなし保育士」という資格や職業はなく、あくまでも通称となっています。
こちらは厚生労働省が出した「保育所における保育士配置の特例」で規定されている「保育士以外を保育士とみなすことができる制度」となっています。
保育士不足に対応するために作られた特例ですが、国が規定しているものの実際に動かすのは地方自治体になるため、どの地域でもみなし保育士が認められているわけではありません。

みなし保育士になることができる人とは

みなし保育士としてみなすことができるのは以下の人です。

・保健師
・看護師
・幼稚園教諭
・小学校教諭
・養護教諭
・家庭的保育者
・子育て支援員(地域型保育コース)
・保育所で保育業務に従事した期間が十分にある者(常勤で1年以上など)

つまり、「保育士」の資格がなくても「保健師・看護師・幼稚園教諭・小学校教諭・養護教諭」の資格を持っていれば可能であり、資格なしの場合は、「家庭的保育者・子育て支援員(地域型保育コース)・保育所で保育業務に従事した期間が十分にある者(常勤で1年以上など)」という「経験」が必要になるということになります。

こうした「経験」が必要の中では子育て支援員研修を受けている人が比較的多くなっています。
これは保育園で働いている人などが多く受けているものです。
この子育て支援員研修には4つのコースがあるのですが、その中の「地域型保育コース」を受けている必要があります。

みなし保育士を設定できる条件とは

保育園としては、みなし保育士が多くいれば助かる、人手不足を解消することができるということになりますが、実際に保育士の資格を持っていない人を無条件に配置することができるというわけではありません。
みなし保育を設定するには条件があり、その条件下でなければ設定することはできません。

その条件は基本的には以下の4種類となります。

・0歳が4人以上いる場合は、保健師・看護師を1名みなせる。
・朝と夕方の子供が少ない時間帯に1名みなせる。(子育て支援員等)
・幼稚園教諭、小学校教諭、養護教諭を必要保育士数の1/3以下までみなせる。3歳以上や5歳以上の担当推奨。
・児童定員に対する必要保育士以上を雇用する場合は、保育士数の1/3数の以下までみなせる。(子育て支援員等。)

0歳児が4人以上いる場合には必要な保育士の人数のうち、1名を「保健師」「看護師」でも保育士とみなすことができるという条件はわかりやすいものかもしれません。
ただ他の条件については多少説明がいるでしょう。

まず、「朝と夕方に1名保育士とみなす」というものです。
保育園では常に同じ数の児童がいるというわけではありません。
朝の早い時間帯や夜の遅い時間帯などは子どもが少ないということも多くあります。
必要な保育士の人数は児童の数によって決まりますので、こうした子どもが少ない時間帯などは必要な職員数が「1名」となる場合があります。
しかし実際には現場の配置基準として「児童の数が少なくても常に2名以上の保育士を配置する」というものがあります。
この通りにすると「子どもが1名でも保育士が2名必要」ということになってしまうのです。
実際にこういった時間帯に保育士を2名配置するのが難しいという保育園も多くあります。
こうした際に「保育士とみなし保育士の2名」という組み合わせが可能となるのです。

ただ、必要な保育士すべてをみなし保育士とすることはできず、「その時間帯に必要な保育士の数の1/3まで」であれば良いというものです。
必要な保育士の数は時間帯ごとに計算する必要があります。

最後の「児童定員に対する保育士以上を雇用する」というものは少しややこしくなっています。
保育園は朝から夜まで長時間にわたって開園しているところがあります。
しかし働いている人はそれだけ長時間勤務するわけにはいかないため、実際には働く人は多くの人数が必要ということになります。
そのため、その保育園で最低10名の保育士が必要という場合でも、その10名ですべてのシフトを埋めることは難しいのです。
この場合は「10名は保育士」が必要ですが、11人目以降はみなし保育士を雇用することができるということになります。

まとめ
保育園によっては職員すべてを保育士の資格を所有している人でまかなっていることもありますが、保育士が不足している地域、保育園も多くなっている現況があります。
それを解消するために規定されているのが「みなし保育士」です。
活動するには条件を満たす必要がありますが、うまく配置することができれば効率的に保育園を機能させていくことができるものとなっています。