電子契約とは、電子ファイル、電子文書に「電子署名」「タイムスタンプ」などを押すことで書面契約と同様の効力を持たせて成立する契約行為のことを指しています。
契約には、契約相手に口頭で契約内容を説明し、口約束することで契約とする「口頭契約」や、契約内容などを書面に記してお互いが署名捺印する「書面契約」がありますが、それを「電子ファイル」などで行うものを「電子契約」と言います。
本記事では電子契約のメリットや書面契約との違いなどについて解説をしていきます、ぜひ御覧ください。
電子契約システムとは
電子契約システムとは、通常であれば紙の契約書にサインや押印手続きを行っていたものをインターネット上で完結できるシステムのことを指します。PDF等で電子ファイル化して作成した契約書に対して、電子署名や印鑑のデータを添付することで契約を締結する仕組みとなります。
従来の契約手続きですと、契約を交わす双方で内容を確認した後、印刷・郵送で先方に契約書を2部お送りして必要事項を記入・押印いただいた上で、再度返信してもらい、その上に自社で押印して1部を再度郵送、1部を自社で保管という流れが一般的です。この手法ですと郵送に時間がかかり契約書を締結するまでに数日かかっていましたが、電子契約システムによる契約手続きですと、全ての手続きがオンラインで完結するため、郵送の必要もなくシステム上ですぐに契約を締結させることが可能です。
契約先にシステムを導入してもらう必要は無く、自社で導入している電子契約システムをもとに利用いただくことができますので、電子契約自体に同意いただいている相手先であれば誰でもすぐに利用いただけます。
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電子契約・電子契約システムについて解説していきましたが、ここからはおすすめの電子契約システムを比較していきます。
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■電子契約
電子署名法に準拠、立会人型・当事者型の電子署名を使い分け可能
・立会人型(認印)と当事者型(実印)両方に対応
・ゲスト(契約相手)も電⼦証明書の取得/利⽤が可能
・締結完了時に認定タイムスタンプを自動で付
■書類送付
請求書・納品書など発行者を証明し相手先へ送信する文書
・受領確認が可能(一覧画面にステータス表示)
・CSVデータ差込による一括送信が可能
・送信時に認定タイムスタンプを自動で付与
・電子角印(企業組織の証明書)の利用が可能
■社内承認
社内関係者の承認を要する文書や日時を特定して長期保存する文書
・取締役会議事録対応(社外取締役も可能)
・社内回付や通達への電子署名で同意/承認を記録
・完了時に認定タイムスタンプを自動で付与
・社内の押印文書を幅広く電子化
■法的保存
非改ざん性証明(タイムスタンプ検証)や長期保存が必要な文書
・スキャナ保存/電⼦取引書類対応(改変できない仕組)
・アップロード時に認定タイムスタンプを自動で付与
・タイムスタンプ有効期限の⾃動延⻑(PAdES/LTV対応)
・電帳法要件の検索、タイムスタンプ⼀括検証を利用可能
■共有フォルダ
特定部門や取引先等と共有する文書
・ファイル/フォルダへのアクセス/ダウンロード権限設定
・URLの発行による社内外とのファイル共有
・PDF以外のファイル形式へも対応
電子契約と書面契約の違いとは
電子契約と書面契約にはいくつかの違いがあります。
ここではそれらの違いを順に紹介していきます。
契約形式が違う
書面契約ではパソコンなどで作成した契約内容などが記された書面を印刷したものを使用します。
紙媒体の契約書にお互いが署名、捺印を行って契約を成立したものとします。
それに対して電子契約は電子契約システム上で作成した書類を使用しますので、入力したものを印刷する必要がありません。
また、電子ファイルの契約書に適切な電子署名が付与されていれば、紙の契約書における押印と同じ効力を発揮します。
証拠能力の違いについて
書面契約の場合は出力した書面文書に印鑑、印影を使用して契約印としたり、契約書に割り印を行うことで改ざん防止とします。
それに対して電子契約では電子ファイルに電子署名やタイムスタンプなどのデジタル時刻証明書を利用することで、それを個人や時刻の証明とします。
扱い方の違いについて
書面契約の場合は、契約書は基本的に2部作成します。
これは取引先などの相手側に渡すのが1部、自社の保管用が1部です。
契約の金額によっては収入印紙を貼って取引をし、直接相手に渡すか郵送などによって相手側に渡します。
電子契約の場合は、契約に関する確認や電子署名などをすべてシステム上で完結させた上で、完成した電子ファイルは電子データとしてサーバー上に保管しておきます。
かかる費用、コストが違う
書面契約の場合は書類の印刷費用や郵送費などの費用がかかるのですが、もっとも大きな費用は「収入印紙代」です。
これは契約した金額に応じて貼る必要があるもので、大きな金額の契約の場合は、数千円~数万円の収入印紙が必要になる場合があります。
書面契約の場合はこの収入印紙代が大きな負担となってきます。
それに対して電子契約の場合は収入印紙代が不要になりますので、大きなコスト削減が見込めます。
また、紙媒体の書類のように保管場所が必要になるわけでもありませんので保管費用も削減可能です。
ただし、電子契約システムを利用するためのシステム利用料などがかかる場合があるので注意しておきましょう。
電子契約システム導入の際注意すべき法律
電子契約はまだ確立されてそれほど歴史がないため、慎重に取り扱われています。
利用する際には電子契約に関する法律を押さえておくと良いでしょう。
ここでは電子契約に関する法律をいくつか紹介しておきます。
電子帳簿保存法
「電子帳簿保存法」とは法人税や所得税などに関する国税関係帳簿書類を電子データとして保管することを認める法律です。
企業で電子契約書を取り扱う場合にはこの法律に従って保管する必要があります。
国税関係帳簿書類を電子データとして保存する場合には7年間のデータ保存、真実性の確保、関係書類の備え付けなどの要件を満たす必要があります。
そのため、導入する電子契約サービスがこういった法律要件を満たしているかどうかの確認をしておきましょう。
ちなみにこの電子帳簿保存法は2022年1月の法改正によって、「税務署長への事前承認制度」が廃止されたことで電子取引でのデータ保存が行いやすくなりました。
電子署名法
「電子署名法」は電子署名が紙媒体での契約書における押印や署名と同じ法的効力を持つことを定めた法律です。
契約は書面がなくても成立はするのですが、間違いなく契約が本人によって結ばれたものであることを証明する証拠がある方がトラブルを防ぐことができます。
そこで電子契約であっても契約の署名を証明できると規定しているのが電子署名法です。
特に重要となる電子署名法第3条は以下のように規定されています。
「電子署名法第3条」
電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
e-文書法
「e-文書法」とは会社法、商法などで保管することが規定されている文書に対して、紙媒体の書類だけでなく、電子化して保存することを認めている法律です。
こちらも改正後は電子帳簿保存法と同じように「税務署長への事前承認制度」が廃止されたことで電子取引のデータ保存が可能となっています。
IT書面一括法
「IT書面一括法」は企業が顧客に対して紙の契約書の交付や手続きを義務付けている法律について、顧客の同意があった上で、電子契約で代替することを認めている法律です。
電子取引を促進していくことを目的として制定された法律となっています。
民法第522条
電子取引に関する法律の前提として2020年4月に改正された民法第522条があります。
「民法第522条」
1.契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。) に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2.契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
このように民法で、契約の成立に書面の作成が必須ではないと明文化されたことによって、契約の電子化への流れが強くなっていると予測されています。
電子契約システムの主な機能とは
電子契約システムにも色々なものがあり、それぞれに備わっている機能が違っています。
重要なのは、自社に必要な機能が備わっているものを選ぶということですが、ここでは一般的な電子契約システムに備わっている基本機能について紹介していきます。
電子署名に関する機能
電子文書、電子データへの署名が契約者本人によってなされたものであることを証明するための本人証明と、署名された電子文書が完成後に改ざんされていないことを証明することができる機能があります。
・押印の代わりに「電子署名」
・印鑑証明書の代わりに「電子証明書」
・契印・割印の代わりに「タイムスタンプ」
といったものは標準機能として備わっていると考えておいて良いでしょう。
「電子証明書」は電子署名が本人のものであることを証明するものとなっており、「タイムスタンプ」は署名時刻や契約書の作成日時を記録して証明することができる機能となっています。
これらの機能は電子契約の「安全性」を高めるために備わっている機能だと言えます。
業務効率を向上させるための機能
・ワークフロー設定のための機能
こちらは電子契約を行う際にどのようなルートで承認をしていくかという承認ルートをあらかじめ設定しておくことで、承認作業がどこまで進んでいるかという進捗状況の可視化をすることで確認しやすくするという機能です。
・アラート通知機能
期限がせまっている書類や期限日を過ぎた書類がある場合や、長時間一定の場所で承認タスクが止まっている場合にアラート通知を行う機能です。
これがあることで承認のし忘れなどを防ぐことが可能となっています。
情報管理を行うための機能
・アドレス帳機能
電子契約を行う際に必要となる、自社の契約承認に関係している社員のアドレス一覧や取引先の連絡先などを登録しておくアドレス帳機能です。
いちいち他のデータから連絡先を探す必要がなくなります。
・電子データ保管機能
締結した電子契約書などの電子データをクラウド上で保管することができる機能です。
まとめてクラウド上で保管することができるので、保管場所があいまいになったり、必要な時に保管場所がわからないということがありません。
・電子データ検索機能
クラウド上で保管した電子データをファイル名、タグ、キーワードなどで検索することができる機能です。
この機能によって電子データが大量にある場合でも必要なファイルを検索することが可能となります。
電子契約システムの導入メリットとは
電子契約にした場合、さまざまな導入メリットがあります。
ここではそれらのメリットを順に紹介していきます。
印紙代、印刷代の削減が可能
電子契約書にすることでさまざまな費用を削減することができます。
まず紙媒体の場合は法律によって契約金額に応じて収入印紙を貼る必要があります。
金額が小さいものであれば1件200円ですが、契約金額が大きくなると数十万円かかる場合もあります。
これが月単位、年単位で言うとかなりの収入印紙費用がかかってくることとなります。
特に契約金額が大きくなりやすい建設業や運送業の場合は大きな負担と言えるでしょう。
この収入印紙を貼るのを忘れてしまうと「税の納付を怠った」という扱いで後に必要な額の3倍を徴収されることとなります。
しかし電子契約にすると、電子契約書は法律上の「課税物件に掲げる文書」ではないので収入印紙が不要となります。
さらに税の納付を怠るというリスクも無くすことができます。
これは年間で言えば数十万円~数百万円の削減にもつながるメリットだと言えます。
また、紙媒体の契約書の場合は契約書を印刷、製本をする必要がありますし、郵送費や準備をする人件費もかかります。
契約を結んだ後にはそれを保管しておく場所も必要となります。
これが電子契約の場合はすべて必要なくなるため、大きくコストを削減することにつながると言えるでしょう。
事務手続きに関する費用の削減が可能
紙媒体の契約書の場合は一連の契約締結に多くの事務作業が必要となります。
テレビコマーシャルなどでもそれを扱ったものがありますが、「契約書を印刷して製本する」「契約書に収入印紙を貼る」「封筒に宛名を記入する」「封筒に契約書を封入する」「郵便局に投函しに行く」といった事務作業が発生するのです。
印刷代などのコストの他に事務担当者の人的コストが大きな問題と言えます。
しかし電子契約の場合は、契約を結ぶという作業はインターネット上で行われることとなります。
そのため、事務作業が大幅に削減されることとなります。
契約締結までの時間の短縮化が可能
書面契約を行う際には、お互いが契約内容に合意した後も契約書原本を作成して印刷、製本、押印して送付、相手方が確認して押印して返送とかなりの時間が必要となってきます。
その途中で決裁者などが不在になる場合にはさらに時間がかかることとなります。
スピード化が求められているビジネスシーンでこれだけ時間がかかるというのは大きなデメリットとなります。
しかし電子契約であれば、メールもしくはクラウド上で契約書の内容を確認し、合意した上でそのまま契約を締結することができます。
また、クラウド上で現在承認作業がどこまで進んでいるのかという進捗状況を確認できる機能もありますので、作業の遅延などを防ぐことができ、契約フローを随時確認することができるというメリットがあります。
保管や管理の効率化ができる
契約書は契約締結後に一定期間保管しておくことが法律で義務付けられています。
紙媒体の契約書の場合は原本を鍵のかかる場所に保管するというのが普通となっています。
しかし電子契約の場合は電子データとしてクラウド上に保管することができるようになるので、保管場所などを考える必要がありません。
また、契約書の量が多くなったとしてもタイトルやタグ、キーワードなどで検索することができるので、必要な契約書を簡単に探し出すことができるというメリットがあります。
在宅勤務に対応しやすい
紙媒体の契約書の場合は決裁者が押印する必要があるため、その用件のためだけに出社しなければならないということがありました。
しかし在宅勤務、テレワークが増えてきたことで印鑑を押すためだけに出社するというのが難しいということが増えてきました。
実際に押印しに行くのが難しい、印刷して製本することが難しいということが出てきたのです。
しかし電子契約の場合は、紙媒体、印鑑、プリンターを使う必要がありませんので、在宅勤務をしている人でも契約書を確認することが可能となっています。
こういった在宅勤務に対応しやすいということもメリットだと言えるでしょう。
契約更新の見逃し防止
契約には契約期間が定められているものが多くあります。
こうした契約期間が終わると更新しなければならないことがあるのですが、紙媒体の契約書を棚などに保管している場合は更新時期に気づかないということがあります。
「契約を打ち切る」「契約を更新する」といった更新手続きを見逃してしまうことがあるのです。
しかし電子契約であれば、契約期限の管理もしやすくなっています。
契約更新の時期が近づいたらアラート通知が来るように設定しておけば更新時期を見逃すということがありません。
通知回数の設定や時期の設定ができますので、効率よく利用していきましょう。
コンプライアンスの徹底がしやすい
紙媒体の契約書の場合は誰かが契約書を見たり、改ざんしたりした場合でもその犯人を突き止めるということが非常に難しいということがあります。
しかし電子契約であれば、契約書の作成、送受信、誰が確認をしたのかということがすべて記録として残ることとなります。
また、完成した契約書の閲覧制限などをかけておけば、見ることができる人を限定することもできます。
オンライン上では何か改ざんなどを行うと履歴が残りますので、管理しやすいということがメリットとなっています。
電子契約システムの導入時のデメリットとは
電子契約システムを導入するには上記のようなメリットが数多くあるのですが、いくつかのデメリットや注意点もあります。
ここではそういったデメリットを順に紹介していきます。
すべての契約が電子契約できるわけではない
契約といってもさまざまな契約の形式があります。
多くの契約は電子契約ができるようになっており、「IT書面一括法」「e-文書法」「電子帳簿保存法」などの施行や改正によってさらに対応している契約は増えてきています。
しかしそれでも法令によって紙媒体の契約書が必要とされている場合があり、それは以下のような契約です。
・定期借地契約・定期建物賃貸借契約
・宅地建物売買等媒介契約
・訪問販売等特定商取引における交付書面
・不動産取引における重要事項説明書等
・マンション管理業務委託契約
・特定継続役務提供などにおける契約前後の契約等書面
・金融商品クーリングオフ書面
といったもので、これらの契約については双方が合意していたとしても電子契約を結ぶことはできません。
しかし「労働者派遣(個別)契約」(2021年1月に電子化が解禁)のように電子化が認められるケースが増えてきていることや、「原則は紙面での契約だが、相手が承諾すれば電子契約でも良い」とする契約もあることから、さらに電子化が進んでいくことが予想されています。
取引先の了承が必要である
電子契約を結ぶ場合は自社だけが電子契約を望んでいても取引先が了承しなければ電子契約を結ぶことはできません。
特に紙媒体への契約書への信頼が厚い、電子データをあまり信用していないといった取引先からするとあまり乗り気にはなってくれないという可能性があります。
相手側に了承してもらうためには電子契約のメリットなどを正しく伝えて納得してもらう必要があります。
また、慎重を期す場合は紙媒体の契約書と電子契約を併用して運用するという方法が良いでしょう。
・取引先とは紙媒体で契約を締結する。取引先は紙の原本を保管して、自社はPDF化して電子保管する
といった方法があります。
取引先の利用に対してサポートが必要な場合がある
取引先が電子契約の利用を了承してくれたとしても、電子契約を利用するための初期投資などのコストがかかるのは避けたいという場合があります。
できれば自社と取引先が同じ電子契約システムを導入していれば理想的ですが、うまく対応できれば問題はありません。
中には専用のアカウントを作成しなくてもリンク先のURLを送付するだけでクラウド上で契約締結ができるというシステムもあります。
ただ、こういったインターネットを利用しての契約締結に不安がある場合や質問などが多い場合には真摯に対応していくことが求められます。
セキュリティ対策の徹底が必要となる
契約書類を電子データとして保管することになるため、企業の通信環境やシステムのセキュリティ対策がしっかりしていないと契約書に関するデータが漏えいしてしまう危険性があります。
契約データは自社だけでなく取引先の情報も記されているため、データが漏えいすると大きなトラブルになる可能性もあります。
情報システム、インターネット回線など全般にわたってセキュリティ対策を行っていく必要があると言えます。
法令に対応する必要がある
電子契約を利用していく際には「電子帳簿保存法」などの法令に対応する必要があります。
特に電子帳簿保存法は2022年1月に改正されており、国税関係の書類のみならず、すべての電子取引のデータ保存が義務化されています。
また、電子契約システムを導入した後には電子帳簿保存法の規定にあった調査が入ることもあります。
そのため、こうした法令に対応した形で運用していくことが求められるのです。
契約に関する業務フローの変更が必要な場合がある
電子契約システムを導入することで、それまでの紙媒体の書面契約とは締結して保管するまでの業務フローが変わってくることがあります。
そのため、自社において電子契約システムを導入することに対する社内研修などを行い、どのようにして操作していくのか、新しくどのような業務フローとなるのかということを周知している必要があります。
電子契約システムの導入方法、運用のポイントとは
では実際に電子契約システムを導入するにはどうすれば良いでしょうか。
ここでは導入方法と、運用していく際のポイントについて紹介していきます。
導入目的を決めてシステムを選んでいく
まず現在の自社の契約締結の状況を確認していき、課題を探していきます。
年間にどれくらいの契約を結んでいるのか、契約締結にどれくらいのコストがかかっているのかを洗い出していきます。
そのうえで、取引先は電子契約システムを導入しているのか、どれくらいの割合で電子契約を行っているのかをはっきりさせておくと良いでしょう。
それらが整理できると、電子契約システムを導入する目的、導入後に期待できる効果をまとめておくと効率的です。
電子契約の導入目的をはっきりさせたら、具体的にどの電子契約のシステムを選ぶのかを検討していきます。
一度システムを導入して、また別のシステムを導入するというのは無駄が多くなりますので、間違えないシステム選びが重要です。
自社に必要な機能が備わっているシステムをリストアップしていったら、それぞれのシステムの具体的な見積もりをとっていき、予算との兼ね合いを考えた上で導入するスケジュールを組んでいきます。
業務フローを変更して社内周知を行う
電子契約システムを導入した後の決裁者の確認していく順番、業務フローをあらためて組んでいく必要があります。
基本的にはそれまでの業務フローがベースにはなっていきますが、電子契約システムを導入すると、閲覧制限を設定したりすることができる関係で業務フローを変更する必要がある場合があります。
大幅に業務フローを変更しなければならない場合などは慎重に進めていくと良いでしょう。
そうして電子契約システムを導入する場合には社内向けに周知をしていく必要があります。
導入直後などは社内研修を組んだり、使い方についての質問対応などを丁寧に行う必要があります。
契約に関わる重要なシステムですので、ミスやトラブルは避けたいところですので、関係担当者が使い方に慣れていくまでは社員のフォローアップを徹底して行うことをおすすめします。
また、取引先に対しても自社が電子契約システムを導入したということを伝達していく必要があります。
運用のポイントとは
電子契約システムを導入する際には自社の担当者や取引先企業が使いやすいシステムを選ぶということが重要です。
この際重要なのはシステムの機能や運用コストなどだけを見て経営者が独断で判断するのではなく、現場で実際に契約作業を行う担当者が使いやすいシステムであるということです。
また、すでに社内で会計システムなどの業務効率向上ツールを利用している場合は、それらをうまく連携させていくことが重要です。
せっかくのシステムでも既存のシステムと連携できないのではまったく効率は良くなりません。
自社のシステムと連携できるかどうかを確認した上で導入をしましょう。
運用していくにあたっては導入するタイミングも考えなければいけません。
契約が立て込んでいるとき、自社の契約担当者が多忙な時にシステムを導入するとミスやトラブルの原因にもなります。
「いつ導入するのか」「いつから電子契約に切り替えるのか」を考えた上で導入をしていきましょう。
そして「費用対効果」を考えることも重要です。
電子契約システムを導入したが、業務が効率化できずにコストがかかっただけ、担当者が新しい仕事を覚えなくてはいけなくなっただけというのでは意味がありません。
電子契約システムを導入する際には予算がどれだけかかるのか、どれだけの効率化が見込めるのかを考えた上で導入をしていきましょう。
電子契約システムの選び方とは
数多くの電子契約システムがありどのように選ぶのかを悩まれる方も多いのではないでしょうか。
ここでは選び方、選ぶ際のポイントについて紹介していきたいと思います。
契約数とコストのバランスを考える
電子契約システムを導入する際にはコストがかかってきます。
一般的に電子契約システムの導入コストは基本料金、契約締結ごとの従量課金、定額制などのプランによって違っています。
月の契約数がそれほど多くない場合は従量課金でも問題ありませんが、かなりの契約を締結する予定なのであれば定額制の方が安心だと言えます。
また、費用を考える場合には「導入コスト」と「ランニングコスト」の両方を考える必要があります。
ずっと使い続けていくのにどれだけのコストがかかるのかということを踏まえた上で導入することが重要です。
セキュリティ対策ができるかどうかを確認する
電子契約システムはその特性上、セキュリティ対策が非常に重要なものとなります。
特に相手側との契約締結の際には、セキュリティ体制が合致しているかどうかも重要です。
通信と保管ファイルの暗号化、ファイアウォール、プランによってはIPアドレス制限機能、ブロックチェーン、EV SSL証明書、Cookieを利用したセキュリティ体制が備わっているサービスもありますので、どういったセキュリティ対策がとれるのかを確認しなければいけません。
電子契約システムでは、企業の重要な情報をクラウド上で扱うため、サイバー攻撃にも対応しなければいけないことを踏まえて考えていきましょう。
電子契約システムの種類で選ぶ
電子契約システムは「立会人型」と「当事者型」という大きな2つのタイプに分かれています。
それぞれにメリットとデメリットがあるので、それらを踏まえて自社に合ったものを選んでいくと良いでしょう。
「立会人型」
特徴・・・利用者の指示に基づいて、電子契約サービス事業者が電子署名を行う
メリット・・・サービス利用者が電子証明書を取得する必要がない
デメリット・・・社内稟議決裁や手続きによって時間がかかる場合がある
「当事者型」
特徴・・・電子認証局による本人確認後発行される電子証明書を利用して、契約当事者が自ら電子署名を行う
メリット・・・第三者である電子認証局による本人確認が行われる
デメリット・・・当事者それぞれが電子証明書を取得・維持する必要がある
どちらのタイプのものでも電子契約としての効力はもちろん有効となるのですが、本人確認の程度が違っています。
なりすましの可能性を確実に無くしたいというのであれば当事者型を選択するのが良いでしょう。
逆にそれほど本人確認を厳格に行う必要はないという場合には立会人型でも問題ないということとなります。
ちなみに総務省、法務省、経済産業省の連名で出された2020年9月4日付「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A」
においては、立会人型であっても一定の要件を満たすものは電子証明法による推定効が働くとの見解が示されています。
備わっている機能で選ぶ
例えば「電子契約システムと同時にワークフローも変更していきたい」という場合にはワークフロー機能が備わっているサービスを選ぶと便利です。
中には契約書ファイルの送信順設定によって、社内稟議、捺印申請、契約締結を兼ねた仕組みとなっているものもあります。
また、「契約書のひな型がほしい」という場合もあります。
契約書を一から作りたくない、できれば統一性を持たせたいという時には契約書テンプレートが備わっているものを選べば使いやすくなっています。
テンプレートから契約書ファイルを検索するようにしておけばアップロードする面倒もありません。
税法上の要件を満たし、持続可能なサービスを選ぶ
紙媒体の書面契約の場合は注文書・領収書・見積書は、「その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保管しなければならない」となっていて保管することが義務付けられています。
それに対して電子契約の場合は一定の要件(電子帳簿保存法施行規則8条等)を満たす場合には電磁的記録による保管も可能です(電子帳簿保存法10条)。
そのため、電子帳簿保存法の要件を満たしているかどうかを考えて選びましょう。
ただし、電子契約システムの場合は第三者であるサービス事業者に契約書データの管理を任せることとなります。
そのため、サービスを提供している会社が倒産しないか、サービス終了しないかといった持続可能性は非常に重要となってきます。
運営会社のサービス歴、知名度、利用者数などから長期にわたて持続可能な会社がどうかを判断していきましょう。
電子契約システムまとめ
電子契約に関する法令が次々と改正されたり、2020年4月には改正民法が施行されていることによって、契約の電子化はますます進んでいくと考えられています。
もちろん電子契約にはいくつかの注意点もあるのですが、正しく利用することでコスト削減、業務効率化、などさまざまなメリットがあります。
まずは自社にどういった課題があるのかを考え、自社に合ったサービスを選んでいくと良いでしょう。
本格導入する前に体験版やトライアル版を利用すれば、より試しやすくなっています。