年末調整は会社全体で取り組まなければならない業務です。担当者は多くの書類と複雑な申告内容を処理しなければなりません。また、普段の業務に加えて申告作業をする従業員にとっても、非常に大きな負担になります。

 年末調整クラウドは、そのような業務を劇的に改善させるサービスです。悩みの種であった書類のやり取りを迅速にし、ミスの発生を抑えることができます。

 この記事では、年末調整クラウドの魅力と、その活用方法についてご紹介します。この記事が、業務改善のお役に立てれば幸いです。

年末調整を多くの企業がクラウド化 クラウド化のメリットとは

 年末調整をクラウド化すると、作業負荷を大幅に減らし、今まで抱えていた問題を解決することが出来ます、クラウド化で解決・軽減できます。代表的なメリットをご紹介します。

郵送・移動にかかっていた時間がゼロになる!

 従来の年末調整の一番の問題は、やり取りに非常に時間がかかるという点でした。特に、現場や客先常駐の従業員の場合、書類を提出するには郵送でも手渡しでも時間がかかってしまいます。もし書類不備で差し戻しになると、さらに追加で数日かかってしまうこともあります。これが原因で、期日に間に合わないということもあるかもしれません。

 クラウド化することで、提出は一瞬で行えるようになります。データはクラウド上に保存されるため、担当者は作成された申告書をすぐに確認できます。今までかかっていた時間は完全にゼロになり、スムーズなやり取りが実現します。

書類作成・修正が容易になる!

 クラウド化によって、申告書作成が格段に楽に、そしてミスなく行えるようになります。
 申告書の作成画面にはヘルプがついているため、従業員は書き方がわからない項目に悩むことなく申告書作成が行えます。また、計算等も自動で行ってくれるため、計算ミスを予防できます。

 万が一不備があった場合でも、年末調整業クラウドであればすぐに修正が可能です。紙の申告書では書類を1から書き直す必要がありましたが、クラウドは不備のあった項目を修正するだけです。従来よりも、修正にかかる時間は大きく削減されます。

提出書類のチェックが簡単になる

 提出物の確認はとても大きな負担です。従来の紙媒体では、申告書の配布・回収、申告書のチェック、計算をほとんど手作業で行っていました。そのためミスも発生しやすく、ダブルチェックにも時間もかかっていました。

 クラウド化により、この労力は大幅に小さくなります。
 まず、配布・回収作業が必要なくなります。従業員は申告用画面にアクセスし、申告書の作成・提出が可能になります。入力画面にはヘルプや計算補助などの機能が備わっているので、申告書の不備を抑えることができます。

 また、管理者が提出状況を俯瞰できるのも大きなメリットです。画面上で従業員の提出状況をひと目で確認できるため、未提出者や修正中の人を漏れなく見つけることが出来ます。加えて、申告データはクラウド上に保存されるため、紛失のおそれがなく管理が楽になります。

 スマホやPCがあればどこでも作業ができるのもメリットの一つです。外出先で生まれた隙間時間を活用できるので、場所にとらわれなずに作業に取りかかれます。

年末調整クラウド化の注意点・デメリット

 年末調整クラウドは非常にメリットの大きいサービスです。しかし、導入前に注意しなければならない点があります。このデメリットを理解した上で、導入の仕方を考えるようにしましょう。

導入のための作業期間が必要

 システムの利用自体はすぐできますが、実際に運用するまでには準備が必要になります。基本情報などを入力する初期設定、申告画面の作成、従業員情報の登録などが必要になります。作業人数、従業員数などで作業期間は変わりますが、多くのサービスは1~2ヶ月程度の作業期間の確保を推奨しています。
 システム導入前から、必要なデータ・作業手順は用意しておくなど、事前に準備できるものは準備しておくことで、導入後の作業期間を短くすることができます。

従業員への周知が必要

 従業員への周知も必ず行わなければなりません。周知が不十分だと、現場は混乱して問い合わせが殺到する恐れがあります。説明や研修などを行ったり、マニュアルを配布するなどして、作業者がなにをすればいいのかを明確に伝える必要があります。

年末調整クラウド選定時のポイント

 年末調整クラウドには様々な種類のものがあります。ここでは、どのサービスを選ぶべきか、着目すべきポイントを整理して紹介します。

サービスは使いやすいか

 従業員が快適に使えるデザインのものを選びましょう。
 申告画面が複雑で、どこに何を入力していいのか、ぱっと見てわからないものはミスの原因になります。余分な情報がないシンプルなものが理想です。
 ヘルプがすぐに確認できる、氏名などアカウントで判断できるものは自動入力する、などの補助的な要素にも注目しましょう。

 使いやすさは、ウェブサイトでの解説やマニュアルだけでは判断できません。トライアルなどを利用して、実際の使用感を確認するようにしましょう

提出状況の管理機能が使いやすいか

 提出状況を確認しやすいかどうかもポイントです。全体の状況が把握しづらいようなデザインだと、書類不備がある人への通知を忘れたり、未提出者に気づかないというミスも起こりえます。従業員一覧から、ひと目で各人の提出状況を把握できるものがおすすめです。
 できれば、検索機能があるものを選びましょう。所属部署など特定の条件で絞りこめると、通知や報告の際に非常に便利です。
 

外部システムとの連携性に優れているか

 年末調整クラウドで作成したデータを、給与システムなど他のシステムに活用すれば、業務効率を大幅に向上させることができます。そのためには、他システムとの連携機能が必要です。

 同じ企業のサービス同士であれば、データ連携は容易です。たとえば、株式会社OBC(オービックビジネスコンサルタント)の奉行年末調整申告書クラウドでは、他の奉行シリーズとデータの自動連携が可能です。年末調整申告書クラウドで作成したデータを利用して、給与業務・マイナンバー対応業務を行うことができます。

 その他には、データをCSV化して、他システムに読み込ませるという方法もあります。この方法であれば、他社のシステム同士であっても連携が可能です。

料金

 年末調整クラウドは、サービスによって様々な料金体系やプランがあります。
 一つは、利用ユーザーの数に応じて料金が変化する従量課金制です。これは比較的少人数の企業に向いています。もうひとつが、月額固定制です。ユーザーの数に左右されないので、大人数での利用に向いています。

 その他、初期費用がかかるものや、最低ユーザー数が決まっているものもあります。自社での利用に最適か、よく確認・検討するようにしましょう。

年末調整クラウドの導入事例や効果的な活用法

 ここでは、実際に年末調整クラウドを導入した事例を交え、効果的な活用方法を解説します。

作業時間を200時間以上削減できた!

 年末調整業務に追われていたA社は、クラウドの導入によって多くの作業時間がゼロになりました。削減できた時間は、合計で200時間以上になります。

 A社は、システム導入前に作業プロセスをリスト化し、それぞれにかかる想定時間を算出しました。結果、郵送作業や電子データと紙データの比較など、多くの作業が不要になるとわかりました。この調査結果は経営陣への提案にも利用され、無事システムの導入と業務改善が実現しました。

 現在の作業プロセスと作業時間を明確にすることは、システム導入前の重要な指標になります。

バラバラな現場と迅速なやり取りが可能になった!

 従業員が複数の現場に常駐している建設業のB社では、年末調整業務は大きな負担になっていました。各現場への郵送作業だけでも、膨大な時間がかかってしまいます。また、書類のやり取りだけで数日かかり、書類不備はそのまま期日遅れに繋がるような状態でした。

 クラウドの導入により、離れた場所からでもすぐに書類の提出・修正が可能になったことで、負担が劇的に小さくなりました。

社外の専門家との連携を蜜にできるようになった!

 社外リソースを積極的に活用しているC社は、年末調整業務でも社労士に管理・チェック等を依頼していました。しかし、データはメールでやり取りされるため、連絡作業に時間がかかっていました。

 クラウド化し、社労士に管理用アカウントを渡すことで、データを渡す作業が不要になりました。また、社労士はリアルタイムでデータを確認できるようになったため、申告書のミスに速やかに対応できるようになりました。

 クラウド化によって、社労士や税理士など、社外の人との連携がスムーズになります。

年末調整クラウドの主な機能

 年末調整クラウドに搭載されている、代表的な機能を紹介します。

従業員への説明・通知機能

 従業員に向けて、システムの使い方等のマニュアルを公開できます。この機能を利用することで、メールなどでマニュアルデータを配布する手間を削減できます。
 また、提出依頼、締め切り前のリマインド、修正依頼などの、通知機能を搭載しています。連絡業務を簡易化・自動化することで、バックオフィス業務の負担を軽減します。

申告書の記入補助

 申告書にミスがないように、申告書作成をサポートする機能です。入力欄に明らかなミスがあった場合や、他の値と整合性が取れない数値が入力された時、エラーを表示します。
 その他、保険会社から取得した電子データを使って自動計算する、など様々な補助機能が搭載されているものもあります。

前年度データの複写

 前年度に入力したデータを再利用することで、作業量を小さくすることができます。毎年同じ情報を入力し直す必要がありません。入力する手間を減らすことで、ケアレスミスの防止にも繋がります。

提出状況の確認

 従業員を一覧で表示し、提出状況がひと目で分かるようにします。また、未提出者に一斉にリマインドを出すなど、一括での操作も可能です。

確認・差し戻し

 書類確認画面から、簡単に差し戻しが出来ます。その際には従業員へ通知が送られるので、メールでの連絡や書類の返送が不要です。作業時間が大幅に減るため、効率よく業務を行えます。

他システムへの連携

 年末調整クラウドで作成したデータを、他システムで利用できます。従業員情報、控除に関する情報などを再利用することで、業務全体の作業量が小さくなります。

年末調整クラウドのまとめ

 年末調整業務は、全従業員との協力が不可欠なものです。しかし、多くの従業員はコア業務に加えて書類を作成・提出するため、どうしても負担が大きくなってしまいます。そのため、年末調整のための作業は可能な限り簡易に、素早く行えるようにしなければなりません。

 年末調整クラウドは、従来の業務が抱えている「やり取り時間がかかる」という問題を解消しました。また、提出状況を俯瞰できるようになり、業務の可視性を高めています。これらの特徴により、迅速・正確な業務を実現します。

 現在のやり方に煩雑さや不便さを感じているのであれば、クラウド化を検討してみましょう。